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プラセンタ療法を受けると献血ができなくなる?

プラセンタ療法を受けると献血ができなくなる?

「プラセンタ療法を受けると、献血ができなくなる」と聞いたことがあるかもしれません。
積極的に献血をしてこられた方にとって、献血ができなくなることは避けたいところではないでしょうか。
今回は、プラセンタ療法後の献血に関する事実、そして献血ができなくなる理由などを説明したいと思います。

プラセンタ療法を受けると献血ができなくなるのか?

治療に用いたプラセンタの種類により、献血ができなくなる場合と献血を続けることができる場合があります。

献血できなくなるプラセンタ療法

ヒト由来のプラセンタ製剤のうち、注射製剤による治療(注射)を過去に受けたことがあると、献血ができなくなります。
現在日本国内で該当するのは、更年期障害と乳汁分泌不全の治療に用いられる「メルスモン」と、慢性疾患における肝機能の改善に用いられる「ラエンネック」の2製剤のみです。
つまりこの2つの製剤の注射を過去に受けたことがあれば、献血は避ける必要があります。
これは日本赤十字社の決定に基づき、平成19年10月10日以降、過去にプラセンタ製剤の注射を受けたことがある人は、当面献血を避けるべきことが通知されています。

10年以上も前の決定ですが、現在のところ方針に変更はありません。

献血を続けることができるプラセンタ療法

献血を避けなければいけないのは、注射製剤による治療を受けたことがある人だけです。
したがって、それ以外の製剤による治療を受けた場合は、対象になりません。
例えば、ヒトやブタの胎盤のエキスを用いたサプリメントや化粧品があります。
これらの製剤は、注射ではなく飲み薬や塗り薬として使用されます。
プラセンタ療法であっても、サプリメントや化粧品を使用しただけであれば、これまでどおり献血を続けることが可能です。
ただし更年期障害の治療に関しては、注射製剤のメルスモン以外の製剤には保険適応はありませんので、ご注意ください。

プラセンタ療法を受けると献血できなくなる理由

では、どうしてプラセンタ製剤の注射を受けると、献血ができなくなるのでしょうか?これは、未知のウイルスや感染症への懸念が根底にあります。

なぜ献血できなくなるのか

厚生労働省の報告によると、平成18年8月23日に開催された輸血事業に関する安全技術調査会において、ヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤を使用した方の献血を、日本赤十字社が制限することが了承されています。

これは平成17年、クロイツェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)という病気の人が日本国内で発生したことに端を発しています。
クロイツェルト・ヤコブ病はアルツハイマー病に似た脳神経障害がメインとなる病気ですが、有効な治療法はなく、発症すると1〜2年で死亡する可能性が極めて高い病気です。
この病気は、輸血などを介して感染することがあるため、国内で感染のリスクを減らす措置が取られました。
つまり、輸血や臓器移植を受けたことがある方、ヒト由来の臓器から製造されている製剤の注射を受けた方からの献血を制限することになりました。
「メルスモン」や「ラエンネック」は、ヒトの体の一部である胎盤から成分を抽出する特定生物由来製品であるため、輸血と同じく感染のリスクがあると判断されています。
なお、これまで「メルスモン」や「ラエンネック」によるクロイツェルト・ヤコブ病の感染事例は報告されたことがありません。
しかし、クロイツェルト・ヤコブ病が伝搬する理論的なリスクが否定できないため、念のための措置として、問診の際に過去の薬剤使用歴(注射歴)などを確認し、献血を制限することになっています。

他に献血ができなくなる状態

ヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤の使用歴以外にも、6ヶ月以内にピアスを開けた、特定の地域への海外渡航歴がある、輸血歴があるなど、他にも献血ができない状態があります。
ちなみにプラセンタの注射剤を使用歴がある方が献血を行うことは制限されますが、大きな怪我をした際や手術を受ける際、必要な輸血を受けることは制限されません。

【まとめ】どうしても献血をしたい場合はプラセンタの飲み薬を検討しましょう

自費診療になってしまいますが、ブタ由来の胎盤エキスを用いた飲み薬でも、更年期障害の症状を軽減させることも知られています。

出典:Kitanohara M, et al. Climacteric. 2017;20(2):144-50.

どうしても献血をしたいとお考えの場合は、更年期障害の内服治療もご検討ください。

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