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市販のヒルドイドと処方薬の違いを解説

市販のヒルドイドと処方薬の違いを解説

皮膚トラブルで病院にいったことのある方ならおなじみの「ヒルドイド」。
手荒れや肌の保湿のために処方されたことも多いでしょう。一時期「ヒルドイド」を病院でも処方してもらいたいということで話題にもなりましたね。
「ヒルドイド」は通常医薬品のため、病院やクリニックでしかもらうことができませんが、「ヒルドイド」の主な成分である「ヘパリン類似物質」が入ったジェネリックの軟膏は市販でも売られています。
では、薬局で売られているジェネリックの「ヒルドイド」とクリニックの「ヒルドイド」はどこが違うのでしょうか。今回は、その違いについて解説していきます。

ヒルドイドの主な成分である「ヘパリン類似物質」とは?

「ヒルドイド=保湿剤」というイメージはあると思いますが、具体的に肌にどのような作用をするかご存知ですか?
ヒルドイドの有効成分である「ヘパリン類似物質」の「ヘパリン」とは、血をかたまりにくくする成分のこと。
ヘパリン類似物質は、その「ヘパリン」に似た化学構造を持つということで命名されました。
もともと蛭(ヒル)が吸血するときに、周囲の血流を上昇させ、血を固まりにくくする成分を抽出したもので、ヒルドイドも「ヒル=蛭」「ドイド=~のような」から由来しています。
「ヘパリン類似物質」は、もともと血を固まりにくくする作用が期待されていましたが、研究が進むうちに肌に別の作用があることがわかりました。
ヒドロキシル基などの親水性の部分と角質にとどまる部分をもっていて、角質に
とどまりながら、角質の水分量を上昇させる作用ももっていたのです。
さらにヒルドイドは、乳液タイプや化粧水タイプ、泡状のタイプやソフト軟膏タイプなど、油分の量によってさまざまな基材を作りやすく、季節や肌の状態、部位によっていろいろ種類を変えることができます。
それまで保湿剤として使われていた「ワセリン」は、肌をコーティングすることで、肌からの水分を逃さない役目がありましたが、角質の水分量自体を上げる作用はありません。それに対して、ヒルドイドは肌に直接水分を維持する働きがあるので、より高い保湿効果が期待できます。
こうして保湿力も非常に高く、色々な剤型としても使いやすい「ヒルドイド」は肌のバリアを作る強い味方として、世界中で広く使用されるようになりました。

「ヘパリン類似物質」はどのような症状に効果的?

ヒルドイドの有効成分である「ヘパリン類似物質」は角質の水分量をあげるため、乾燥肌や手荒れ、肌荒れに非常に効果的です。
さらに、もともとの作用である周囲の血流をよくする作用があるため、傷あとの茶色い色素沈着の改善も期待できます。また、皮膚を柔らかくする作用を持っているので、かかとのひび割れや、傷の治ったあとの肥厚性瘢痕(固く盛り上がるような皮膚病変)を予防する効果もあります。
他にも、打ち身や捻挫のあとの腫れをとる効果や筋肉痛・関節痛の緩和の効果も期待できます。
このようにさまざまな皮膚トラブルに広く対応できるのが「ヘパリン類似物質」の特徴です。

「ヘパリン類似物質」がある処方薬と市販薬の違いは?

では、処方薬と市販薬との違いはなんでしょうか。
結論から言うと、成分から言えばほとんど「同じ」になります。
違う点は有効成分以外の「基材」と呼ばれている部分が多少異なります。また、会社によっては、市販薬同士の違いを強調するために多少成分を変えている場合があります。(詳しくは後述)
しかし、一番の違いは、肌にあっているかどうか医師が直接判断し処方してもらえる点でしょう。
ひとことで「乾燥肌」といっても、実は肌のタイプは人によって大きく違います。特に、市販薬の「ヘパリン類似物質」含有の軟膏を使っていて、かゆみなど違和感がある方は、一度医師に相談してみるとよいでしょう。
また、薬も保険適応なので、1割から3割負担になります。小児の場合は無料の場合もあります。
これが「ヒルドイド」を処方してもらうために、クリニックに人が殺到してニュースになった理由でもあります。
一方、市販薬だと薬局に行けば買えるため、待ち時間なく買えますし、最近はより使いやすくするように各社工夫を凝らしています。
「クリニックでも待って、薬局でも待って・・・」といった時間を時給換算したら、処方薬のほうが高くついてしまうかもしれません。
「肌の状態を確認しなくてもいいから薬だけ欲しい」という方は、薬局での購入も検討するとよいでしょう。

「ヘパリン類似物質」がある市販薬には何があるの?

では、市販薬には具体的にどういったものがあるのでしょう。
各社いろいろな「ヘパリン類似物質」含有軟膏を出されているので、ここでは代表的な市販薬をご紹介します。

①ヒルマイルド

健栄製薬から乾燥肌治療薬として、2020年8月に販売開始された商品です。
ヘパリン類似物質が医薬品同様の100g中0.3g含まれています。
基材としてサラシミツロウ、セレシン、白色ワセリン、エデト酸ナトリウム水和物などが含まれていますが、ほとんど医薬品と変わらない成分となっていますので「ヒルドイド」とほとんど変わらない効果が期待できます。
軟膏タイプの他、ローションタイプも売られています。
価格はクリーム・ローションタイプだと60gで1,500円程度です。

②ヒフメイド油性クリーム

ジャパンメディックより販売されている商品で、第2類医薬品です。
ヘパリン類似物質が医薬品同様の100g中0.3g含まれています。
添加物として、グリセリン、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシンと医薬品の「ヒルドイド」とほとんど変わりません。
価格面では50gで1,280円から販売されており、5,000円以上だと送料無料なのが特徴です。

※2021年2月調べ

③アットノン

小林製薬から発売されている第2類医薬品です。
「傷あと、やけどのあとにアットノン」のキャッチコピーでCMもされている通り、保湿剤の効果よりも「ヘパリン」のもつ傷跡の修復力に着目しています。
ヘパリン類似物質が医薬品同様の100g中0.3g含まれていますが、他にも、傷ついた皮ふ組織の修復を助ける作用をもつ「アラントイン」の他、肌の炎症をおさえる効果のある「グリチルリチン酸ニカリウム」が有効成分として配合されているのが特徴です。
これにより炎症を抑えながら、ヘパリンの持つ傷跡の修復力をより高める効果が期待できます。15g/1,100円程度で売られており、他の「ヘパリン類似物質」製剤よりは高額になっています。

④へパリケア

ロート製薬から出されている「ヘパリン類似物質」に着目した保湿ローションです。他の製剤同様、第2類医薬品になっています。
ヘパリン類似物質が医薬品同様の100g中0.3g含まれています。
こちらの商品は、保湿力を上げるため、他にもビタミンA油(ビタミンAとして5000国際単位)が1g中5mg有効成分として含まれていることが特徴です。
ビタミンAも皮膚に適度な水分を保持させ乾燥や刺激などから皮膚を守ることで湿疹などの発生や悪化を防ぐ効果が期待され、ヘパリン類似物質の作用とは違う作用機序のため、相乗効果が期待できます。
価格も50mlで1,300円と、他の製剤と同じくらいになっています。

【まとめ】市販のヒルドイドと処方薬の違いを解説

「ヒルドイド」の主な有効成分である「ヘパリン類似物質」は、医薬品でも市販薬成分的には「同じ」になります。
保険適応にならない分、市販薬が高めに感じるかもしれません。しかし、待ち時間などを考えるとかえって賢い選択かもしれないですね。
医師に肌の状態を確認してもらわず「保湿剤だけ」のために病院を利用する場合は、薬局で買った方がよい場合もありますので、賢く市販薬を利用することも一つの方法です。
逆に、「ヘパリン類似物質」含有の軟膏を使用して、かゆみや皮膚トラブルが出てくる場合は、早めに皮膚科を受診するとよいでしょう。

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