エラスチンの効果を徹底解説

エラスチンの効果を徹底解説

最近になって、美容の分野などでよく耳にするエラスチン。美肌の成分として知られますが、肌だけでなく全身のいたるところに存在し、丈夫な体作りに役立っています。
エラスチンは水に溶けないため抽出や解析が難しく、コラーゲンやヒアルロン酸などの水溶性の美容成分に比べると、これまであまり研究が進んでいませんでした。
しかし近年になって、生化学や遺伝子工学の手法を用いた解析法により研究が大きく進み、今や食品や製薬、化粧品の会社や大学など、様々な機関で研究が行われてきています。
ここではエラスチンの性質や効果、用途などを解説していきます。

エラスチンの特徴

エラスチンはゴムのような高い伸縮性と弾力を持ち、水に不溶なタンパク質です。
トロポエラスチンという水溶性のタンパク質がたくさん繋がることで形成されています。
トロポエラスチンはグリシンやプロリン、アラニン、バリンなどの水に溶けにくい(疎水性)アミノ酸や、水溶性アミノ酸であるリジンを豊富に含んでいます。
異なるトロポエラスチン間のリジン同士が結合(デスモシン、イソデスモシン架橋を形成)してたくさん繋がっていくと、水溶性のトロポエラスチンから不溶性のエラスチンが形成されます。
そうして長い糸のようになったエラスチンは、疎水性相互作用で折りたたまれてゴムのようになることで、伸縮性・弾力性を獲得します。

生体内での役割・合成・分布

エラスチンは細胞外マトリックス(細胞の外の領域を満たす物質)を構成する物質の1つで、弾性系線維の主成分として組織に伸縮性や弾力を与えます。
材料となるトロポエラスチンは、線維芽細胞や血管の平滑筋などから分泌されています。分泌されたトロポエラスチンは自分で整列や複合ができないため、微細線維(マイクロフィブリル)を足場として複合(架橋)され、エラスチンになります。微細線維はフィブリリンという糸状のタンパク質からなり、トロポエラスチンと同じく線維芽細胞や血管平滑筋などから分泌されます。
弾性系線維の形成過程では、まず微細線維が複数形成され、その隙間にトロポエラスチンが集まって蓄積します。トロポエラスチンはそこで酵素によって複合(架橋)され、エラスチンになっていきます。その反応が進んでいくと、やがて微細線維が鞘のようになってエラスチンの芯を取り囲んだ形になり、これが弾性系線維となります。
特に強度や弾力が必要な皮膚(真皮層の細胞外マトリックス)や靭帯、収縮・拡張といった動きが必要な血管や肺などは弾性組織と呼ばれ、豊富な弾性系線維によってその機能を発揮します。
同じく細胞外マトリックスの構成タンパク質であるコラーゲン(膠原線維)には、弾力や伸縮性がありませんが、ワイヤーのように硬く強靭で、引っ張る力に強い性質があります。
コラーゲンのように硬くて頑丈な物質が骨組みや土台になると、組織の形は安定して強度が増します。ところが、硬い陶器が落下などの衝撃ですぐ割れてしまうように、物は硬さだけを高めると脆くなってしまいます。硬く頑丈な膠原線維と、しなやかな弾性系線維が組み合わさることで、丈夫で壊れにくい組織が形成されるのです。

弾性系線維の種類

エラスチンと微細線維の割合によって、弾性系線維は以下3種類に分けられます。

  • オキシタラン線維:エラスチンを含まず、微細線維のみからなる
  • エラウニン線維:少量のエラスチンからなる芯の内部と周囲に多数の微細線維がある
  • 弾性線維:多量のエラスチンからなる芯を少数の微細線維が取り囲んでいる

皮膚においては、真皮の下層から表皮に近づくにつれて弾性系線維が細くなっていき、下層に弾性線維、中間層にエラウニン線維、そして表皮に最も近い乳頭層にはオキシタラン線維が分布しています。これらの線維は繋がっており、弾性線維からエラウニン線維、エラウニン線維からさらにオキシタラン線維が派生しています。
弾性線維とエラウニン線維は、皮膚表面に対して水平方向に張り巡らされていますが、オキシタラン線維は垂直方向に伸びて基底膜(表皮と真皮の接合面)に接合し、傘のようになって皮膚を支えています。

※便宜上、ここでは3種類の線維を総称して「弾性系線維」と呼んでいますが、一般的にはまとめて「弾性線維」と呼ばれることが多いです。

エラスチンの効果

体内のエラスチンを増やすことで、組織の機能や肌のハリを向上させる効果が期待できます。
培養細胞を用いた研究では、エラスチンが線維芽細胞のヒアルロン酸合成を促進することが分かっており、さらにコラーゲンと一緒に添加すると、より効果が高まることが確認されています。
エラスチンを使った研究や製品においては、酵素や酸・アルカリなどによる分解を受けて水溶化したエラスチンペプチドがよく用いられており、ここではエラスチンペプチドによる効果について用法ごとに説明します。

食べる場合

ヒトやマウスを対象とした研究より、エラスチンペプチドを1ヶ月~2ヶ月ほどの長期間に亘って継続的に食べることによって、皮膚の弾力や水分量の増加、大動脈の機能が改善することが確認されています。
口から摂取したエラスチンペプチドは胃腸で分解され、アミノ酸、またはより短いペプチドとなって腸から吸収された後、血中に移行して全身を回ることによって効果が現れると考えられています。

肌に塗る場合

ラットやマウスを対象とした研究では、エラスチンペプチドを含むクリームの塗布によって皮膚の弾力が上がり、紫外線ダメージが緩和されることが分かっています。
皮膚は表面の表皮層とその下の真皮層に分かれています。表皮の顆粒層にある細胞は互いに強く結合(タイトジャンクションを形成)することで通せんぼをして、体内の水分が外に漏れたり、外から細菌やウイルスなどが侵入するのを防いでいます。
基本的に肌に塗った物質がこのバリアを通過することはなく、塗布したエラスチンは表皮層に留まると考えられますが、真皮層に作用して線維芽細胞の活性化やエラスチン変性の抑制に働く可能性などが示唆されており、詳しいメカニズムについては不明な部分が多いようです。

エラスチンの用途

エラスチンは美容や健康分野の食品や化粧品などに含まれ、これらは主に美容や健康目的で利用されます。血管や肺、靭帯など、普通の食品に含まれない部分にエラスチンが多いため、食事よりもサプリメントなどによる摂取が推奨されており、こういった製品には、細切れにされて水溶性になったエラスチンペプチドが用いられています。
エラスチンは加齢による線維芽細胞の機能低下や、紫外線による分解・変性などによって減少し、これが肌のシワやたるみの原因になります。また加齢においては、肌だけでなく血管や靭帯などの弾性組織の機能低下にも繋がります。エラスチンの摂取や塗布を継続的に行うことで、これらを改善する効果が期待できます。

【まとめ】エラスチンの効果を徹底解説

エラスチンは細胞外マトリックスの弾性系線維として機能し、弾力や伸縮性が必要な皮膚や靭帯、血管、肺などに多く含まれています。
エラスチンペプチドを継続的に取り入れることで、肌の弾力性・水分量の向上や、大動脈の機能維持・改善などの効果があることが確認されています。
しかし、コラーゲンやヒアルロン酸など、他の美容成分と比較するとエラスチン研究は遅れを取っており、まだ追及の余地がある分野と言えるでしょう。今後ますますの発展が期待されます。

用語説明

  1. デスモシン、イソデスモシン
  2. エラスチンに特徴的なアミノ酸で、リジンが4つ結合することで作られます。
    1本のトロポエラスチンから2つずつリジンを出し合ってデスモシン、またはイソデスモシンを形成し、2本のトロポエラスチンを結合(架橋)します。これを繰り返して複数のトロポエラスチンが繋がっていくと、エラスチンになります。デスモシン、イソデスモシンは変形性に富み、これもエラスチンの弾力や伸縮性に関わっています。

  3. 疎水性相互作用(疎水結合)
  4. 疎水性物質(水になじまない物質)が水(極性溶媒)の中で集まること。生体内のような水で満たされた環境に疎水性物質を入れると、水にはじかれた疎水性物質同士が集まり、弱い力でくっつくようになります。

  5. 線維芽細胞
  6. 細胞外マトリックスを構成するコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの線維を作る細胞。ほぼ全ての組織に存在し、組織の傷を治す時などは活発に線維を合成します。

  7. エラスチンペプチド
  8. ペプチドとは、比較的短いアミノ酸の鎖(数個~数十個ほどつながったもの)を指します。
    ペプチド、またはもっと長いアミノ酸の鎖が折りたたまれるなどして、特徴的な立体構造をとったものがタンパク質です。
    エラスチンペプチドは、エラスチンが細かく分解されてペプチドになったものですが、エラスチンの特徴となるデスモシンやイソデスモシンは残しています。またペプチド化(断片化)によって、不溶性のエラスチンが水に溶けやすくなります。

参考文献

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監修医師
医療法人社団雪焔会 トイトイトイクリニック
理事長・統括院長

野田 のだ 知路 とものり - Noda Tomonori -

監修医師 トイトイトイクリニック理事長・統括院長 野田 知路

福岡大学医学部形成外科、大手美容皮膚科院長を経て、医療脱毛をメインとする美容皮膚科クリニックを都内(渋谷原宿、池袋)で展開中。
常に自分の家族ならこうしたいと考えるよう心掛け、「家族にも勧められる美容医療」を信条としています。